カテゴリ:ヨセミテでの日々( 32 )

ヨセミテの日々、見果てぬ夢<後編>  最終話

11月2日(月)~11月4日(水)

11月に入ったというのに、嘘のように暑かった。
ゲン担ぎをしたのにも関わらず、Bruce Lee(V8)を完登にこぎづけるところまで到底かなわなかった。
一体この課題にどのくらいの時間と労力をかけたのだろう?
この日も3時間くらいトライし続けたが、もうトライすることを諦めてしまった。
すでに、気持ちが折れてしまっているようだった。

夕方、急に思い出したようにMidnight rightning(V8)をトライすることにした。
しかし、以前あれだけ熱意があったのに、もはや登ってやるというような闘志は、自分でトライしていて感じることは出来なかった。
この課題を諦めることに全く後悔や、口惜しさはなかった。

暗くなってから、ヘッドランプを灯しながらカリービレッジのボルダーで遊んだ。楽しかった。昔登ったV3を再び登ったり、新たにトライしたV4、V6を完登出来てうれしかった。

すっかり遅くなってキャンプ4に帰っても、まだ佐久間さんは帰っていなかった。
しばらくして帰ってきた。
センチネルのステックサラテ(5.10b 15P)をオンサイトフリーソロしてきたと言った。
佐久間さんをそこまで駆り立てるものは、一体何なのだろうか?


3日、とうとうヨセミテでのクライミングは最後の日になった。
今度は一人で、ミラーレイクトレイルヘッドに降りた。
ホーストレイルのボルダーで遊んだ後、また移動しアワニーボルダーに行った。
Silent Spotter(V6)という課題をフラッシュしてしまった。V6は初段-に相当する。たぶんV4(2級)あたりが妥当なグレードだと思う。
しかし、この課題名の由来かもしれないが、下地がよろしくない・・・。興味のある人は見に行ってね。

他にも、V5を3個登れた。これらはそこまで簡単ではなかったけど・・・。それにしても、今風な課題が沢山あっていい。基本下地も最高だ。
三個目のV5を完登したところで、クライミングを終了することにした。

2年前も最後にV5を完登したのが最後のクライミングになった。その時は、もうヨセミテを離れなければならないことに非常に悲しくなった。もしかしたら、もうヨセミテに来ることは出来ないのではないかと予感していたのかもしれない。
しかし、今回は非常に爽快な気分だった。
もうヨセミテは、ぼくにとって、夢の楽園でも、約束の地でもない。いつでも訪れることの出来る場所になったのだ。

この晩、一人でたき火をした。
ビールを何本か買って、眺めながら飲んでいた。
まだ佐久間さんは帰ってこない。フリーソロ・ワンディ50ピッチトライをやりに行ったままだ。
薪が無くなったので、拾いに行って来ると佐久間さんが帰ってきた。
ぼくに気が付かなかったようで、すぐにテントに入って寝てしまったようだった。


4日、とうとうヨセミテを離れる日が来た。
朝食の準備をしようとMSRに点火しようとしたら、あぐらをかいた黒い物体が目に入った。
目を凝らしてみると、何とブラックベアがフードボックスをあけて中の物をおいしそうに食べていた。
持ち主はまだ寝てるようだ。他に気づいている人もいない。
あまりにもキャンプ4にとけこんでいるブラックベアに、なぜか怒り心頭になり、コッヘルとスプーンで鳴らしながら、日本語で「あっちいけ!!!」と叫んだ。
クマは全然逃げもしなかったが、騒ぎを聞きつけてクライマーが集まりだし、持ち主が気づいてキレると、とうとう逃げ出した。

すべての荷物をパッキングして、ちょうど出かけようとした佐久間さんと一緒にヨセミテロッジまで行った。
そして、別れの挨拶をした。ありがとうございました。また日本でよろしくお願いします。そんなことを言った気がする。
それが、今生の別れになろうとは、夢にも思っていなかった。

マーセド行きのバス停の目の前に、100L満載のガッシャーブルムとクラッシュパッドを放置して(まさかパクる奴はいないだろうと思って)、トイレに行った。戻ってきて、ふとシャトルバスのバス停を見た。すでに佐久間さんはいなかった。


成田空港に降り立ち、電車を乗り継いで都内に入ると、なぜかぼくは、日本にいるのに、まるで異国の地にいるかのような感覚になったのだった。

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-「ヨセミテでの日々」終わり-
by kaitin-yusei | 2010-04-21 01:56 | ヨセミテでの日々

ヨセミテの日々、見果てぬ夢<前編>

10月29日(木)~11月1日(日)

ハングドッグフライヤーを完登した翌日、前々日にレストにしたばかりだったので、ボルダーをすることにした。ルートにおいては、今回の目標であった12台のクラックを完登するというのを達成したので、V8クラスのボルダーを登るという、もう一つの目標に主眼を置くことにした。
しかし、佐久間さんとKing Kobra(V8)をトライしても、以前出来たムーブが全然出来なかった。
気分を変えて、スワンスラブのボルダーを登るが、明らかに簡単そうなV3が、何度やろうとも完登出来なかった。これには愕然とした。疲労が溜まっているようだった。

30日、佐久間さんとエルキャピタンベースに行った。
ここにはお手頃な長いショートルートでいっぱいだ。
佐久間さんは、かのニコラ=ファブレスがゲロを吐いたというオフィズス、Ahab(5.10b)を一撃。
山岳部の同期・村田も登っているが、村田の話を佐久間さんにすると、会ってみたいと言っていた。
その後、佐久間さんはSacherer Cracker(5.10a)を登るが、最後の5.9のオフィズスではまってしまった。
上がってはずるずる降りてきてを何度も繰り返し、結局となりのルートに無理矢理合流し、降りてきた。村田はそこを6秒くらいで片づけていたが・・・。言わなかったけど。

31日は再びBruce Lee(V8)をトライしたが、あまり進歩はなかった。
この日で正規滞在期間は終了した。そう、もう1ヶ月もヨセミテにいるのだ。買い物に行ったりすると色んな格好で仮装した人を見かける。
そうだ。今日はハロウィンだ。超奇抜でド派手なドレスを着たおばちゃんを見て、カリービレッジのスーパーの店員がみんな爆笑していた。

1日、またエルキャピタンベースに行く。Sacherer Cracker(5.10a)を佐久間さんは意気込んで登り、完登した。
ぼくもやったけど、なぜ佐久間さんがはまったのかよく分からなかった・・・。最後のオフィズスも簡単だったし。

あれだけ混んでいて、連日CAMP FULLの看板が見られたキャンプ4は、すでにがらんとしていた。
たき火を囲んだクライマーの会話もまばらになり、キャンプ4の夜にふさわしい音楽の調べを聞くこともなくなっていた。

ぼくは、レンジャーの夜の見回りを警戒して、森の中で寝ることにした。
登れますようにと、ゲン担ぎのつもりでBruce Leeのある岩の下で寝たのだった。
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by kaitin-yusei | 2010-04-20 03:41 | ヨセミテでの日々

Hang Dog Flyer(5.12c) Day 3 10月28日(水)

その日は、身の凍るような寒さだった。

ミラーレイクトレイルヘッドのバス停で降り、佐久間さんがトライしている5.11dのオフィズスのある岩場に行く。
この岩場は、午前中は日が当たらず、昼くらいになってくると段々当たるようになる。
変わって、ぼくのトライしているハングドッグフライヤーのあるエリアは、午前中に日が当たり、午後になると日が陰るので、今まで暑かったから日の当たらない時間帯にトライするようにした。
しかし、真冬の様な気温と、断続的に吹く日本の北風のような風で、芯から体が冷えそうだった。

トップロープで佐久間さんはノーテンションでこのクラックを登ることが出来たので、リードでトライすることになった。
その合間、あまりにも寒いので日が当たっている場所に移動し、のんびりすることにした。

ふと、目の前に見える大岩壁に目を向けた。・・・ワシントンコラムだ。
クラックの11台の連続するアストロマンに、2パーティー登っているのが見えた。
悪名高い「ハーディングスロット」のあるピッチまで進むと、ほぼ敗退は不可能になる。しかし、まだ核心は終わっていない・・・。日本において、このようなハイプレッシャーなクライミングは、アルパインにおいても体験し
うるだろうか。

佐久間さんもアストロマンはまだ登っていなかった。来年は佐久間さんとアストロマンをトライするのだろうか。そのようなことを二人で日向ぼっこしながら考えていた。

先行パーティーがまさに「ハーディングスロット」のピッチに到達するという時に、佐久間さんはリードすると言った。
佐久間さんはキャメロットの4番、5番、6番を使って、レッドポイントしてしまった。常に片足は頭より上にあったから、落ちることは出来なかっただろうけれど、割と余裕はあったようだった。
その後、荷物をまとめ、ロイヤルアーチの右端にあるハングドッグフライヤーに移動した。

のんびりと準備をして、この日の最初のトライをした。
核心の出だしの悪い部分で手こずってしまい、あっけなく落ちてしまった。
もうすべてのムーブを解決しているので、終了点まで上がることはせず、エイドダウンしながらカムを回収し、降りることにした。

休んでいる間、リラックスすることに努めようとした。しかし、どうやらピリピリしていたようで、ふと佐久間さんを探すとぼくから離れて日向ぼっこしていた。
こっちに来ても非常に寒かった。段々、日が暮れようとしていた。日向を求めても序々に無くなってきた。
時間の進み具合が妙に早く感じた。どうやら本心では登りたくないということなのか?

二回目のトライも散々だった。
2回か3回くらい、フットジャムが外れて落ちかけてしまった。それでも何とか持ち直し、力を無駄に使いながらも核心部最後のカムをセットした。
後はレストポイントまでの3~4メートルだった。すでに赤信号は点滅している状態だった。もう耐えきれない・・・!でも、もう少しなんだ!!!
ガバのハンドジャムサイズのクラックに右手を突っ込んだ瞬間、赤信号が完全に点灯した。危なかった。右手はジャミングというより、ボトミングではまっているだけだった。

必死の思いでレストの体勢に持ち込み、必死の思いでレストをした。
10分くらい?どれくらい休んだか分からないが、ようやく落ち着いたところで、ほぼノーハンドレストの出来るレッジを見た。
頭の中でレッジまでのクライミングをシミュレートする。そしてそれを実行すると、意外にするするとレッジに這い上がる事が出来た。
ここでようやく心が安らぐまでレストが出来る。
かなり長く休んだところで、レッジから離陸した。
最後のプロテクションであるロックスの3番を入れた。しかし、慎重にいれたつもりが変なところにはいってしまった。すでにムーブを起こしていた。仕方ないので、そのままにして登ることにした。

その、ロックスの3番を蹴って弾かないよう、慎重に足を上げ、その上のクラックに置いた。
最後のリップを取るムーブの時、ふと佐久間さんのガンバ!の声が聞こえた。
岩から弾かれることはなく、ロープスリングが大量に残置されている終了点に到達することが出来た。
ふと後ろを見ると、今まさに太陽は赤くひかり、地平線の向こうに沈もうとしていた。
その瞬間、ぼくの心の中に、色々な感情が巡った。

すべてのギアを回収し、地面に降り立った時はすでに暗かった。
佐久間さんがほめてくれながら、握手をしてくれた。
by kaitin-yusei | 2010-04-20 02:38 | ヨセミテでの日々

Hang Dog Flyer(5.12c) Day 2   その2

ぼくが休んでいる間に、佐久間さんはHang Dog Flyerの隣にある5.10cのワイドクラックを完登していた。

佐久間さんは昨日もトライしていたのだが、キャメロットの4番をずらしながら登っていると、4番が手詰まりになってしまい力尽きてしまっていた。
熱心に、今は発売していない3.5番の有用性を語っていた。

今日はキャメの4番よりちょっと小さいフレンズの4番を使うと、カムの調子が良かったようで、すんなり登っていた。


ルートが影ってきたのを確認した後、この日二回目のトライを開始した。
キャメロットの1番を入れたあとの1番悪い部分を、一度落ちかけながらも何とか突破。
ここで、一度吼えた。恐怖心を払拭するためだ。
すでに、前腕は結構張っている。

それでも、手堅くハンドジャムの決まるレストポイントまで、落ちずに進む事が出来た。
ここで、心が落ち着くまでレストし、スーパーレストの出来るレッジまで、再び天井レイバック。
必死の思いで、レッジにマントルを返して乗っかった。

最初にトライしたときは、完登に疑問を感じるほどムーブに絶望を感じていたのだが、何ともう核心を突破してしまった。
その現実に最初はびっくりしていたがレッジで休んでいると、完登出来るぞー!といううれしさがだんだん湧いてきた。
さっきのトライで、ここからのパートも確認している。問題ないと思っていた。

レッジから離陸して、ロックスの3番を入れた。そこから、一旦クライムダウンしてさっきのレッジで休もうとした。
しかし、全く降りることが出来なかった。
それもそうだ、両足スメアリングで離陸しているのに、クライムダウンなんて非常に困難だ。
それでも何としても降りることしか頭になく、結局力尽きて落ちてしまった。

非常に変な形でクライミングが終わってしまったので、怒りなどはなかったが、時間が経てばたつほど、くやしさがわき起こってきた。
by kaitin-yusei | 2010-02-21 23:08 | ヨセミテでの日々

Hang Dog Flyer(5.12c) Day 2  その1 10月26日(月)

-あらすじ-

2009年9月30日、ヨセミテでクライミング修行のため、日本を発った。
一人のため色々と不安があったが、キャンプ4で様々な人々と出会うことが出来、有意義な日々を過ごしていた。 
武蔵村山市にあるクライミングジム、マーブーの店長と常連さん4人組のみなさんと別れたあと、一人で登っていたが、ある日、キャンプ4で佐久間博臣さんと出会った。
佐久間さんは、ヨセミテやパタゴニアに足繁く通い、国内でも岩場に入り浸っている日々を過ごしていた。
お互い一人だったので、よくタッグを組んで登った。

そして、ぼくはとうとう自身初の12台のクラック、しかも12c に挑戦することになった。
その二日目の、トライの話である。
-----

この日も、アワニーホテルから歩いて岩場に向かった。
ここ、アワニーホテル周辺にもボルダーが沢山ある。
割と、最近のボルダリングのエリアのようで、まだ開拓中のエリアでもある。

ホーストレイル沿いにある、とあるボルダーでアップすることになった。
まだ、朝早かったし、少々寒かったので体はあまり動かなかった。
簡単な課題だったのに、二人とも少々手こずってしまった。

体があたたまったころ、Hang Dog Flyerへ向かった。
登る前にカムとナッツをギアラックに取り付ける。
このルートは、キャメロットの0.75番を3個使う。1番を半ば無理矢理使っている部分もあったので、実質4個使っていると言ってもいいだろう。いや、5個あってもいい。
クラックをやったことのある人だったら、このサイズを多用することが、どういうことを示唆するか分かるだろう。

前日は、無理矢理ジャミングを試みて、全く勝負にならなかったが、すでにこのルートを完登している佐久間さんからの助言で、天井レイバックをしてみることにした。
すると、非常に苦しいのではあるが、するすると前進することが出来た。

キャメロットの4番、すぐに3番を入れたあと、ちょっと進んで1番を入れたその後からの、少々クラックの細い部分が悪く感じる。
そこを慎重に突破したら、あとは0.75番、0.5番、エイリアンの赤を入れ、ガバのハンドジャムが決まる部分まで、ムーブこそ悪くないものの、非常にストレニュアスな登攀が続く。

この日最初のトライで、天井レイバックが有効であることを発見し、カムを入れる場所・番号を確認した。ほとんどノーハンドで休めるレッジからの、フェイスチックなフィンガークラックの部分のムーブは、思いの外簡単だったので、とにかく天井レイバックをしなければならない前半部分に集中することにした。

その判断があとで後悔することになったのだが・・・。
by kaitin-yusei | 2010-02-20 23:55 | ヨセミテでの日々

Hang Dog Flyer(5.12c)  Day 1  10月25日(日)

ずっと前、ホーストレイルのワイドクラックを、佐久間さんが登るのに付き合った帰り、とある方角の方向を指さして、
「あの向こうに5.12台のクラックと、10cのワイドクラックがあるんだよね~」
と佐久間さんが言った。

最近になって、ふとそのことを思い出し、佐久間さんに、あの時言っていたクラックどれくらいでしたっけ~?と言ってみると、
「5.12cだよ」との返事だった。ちょっと、グレード的に無理かなあと思ったのだが、佐久間さんは続けて、
「結構登りやすかったし、橋本くんイケるんじゃないかな」
と言ったので、登ってみることにした。


アワニーホテルから歩いて、ロイヤルアーチの右端っこに、Hang Dog Flyerがあった。
ひたすら斜上した、凹角のクラックが20m程続いている。

実際取り付いてみると、非常にサイズの悪いシンハンド。よって、カムのサイズはキャメの#0.5から#0.75くらい。そのサイズのクラックが延々とも思える程に続いている。

頑張ってシンハンドジャムやサムカムを決め、左足をクラックにねじこみ、右足をスメアで体勢を整えようとするが、どうしてもジャミングが決まらず、前進出来なかった。

最初のトライは、結局キャメロットの#0.75が足りなかったこともあり、途中で降りることにした。

二度目は、とりあえずいけるところまで行こう!と心に決めて、登りだした。
しかし、核心の始まってから、ほんの2,3メートルのところで、力つき、落ちてしまった。


Hang Dog Flyer(5.12c)
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しかも、半裸でトライしたら、落ちたときに右の肩の下を思い切りロープバーンして、怪我をしてしまった。
by kaitin-yusei | 2010-02-07 23:36 | ヨセミテでの日々

El Capitan East Buttress  10月24日(土)

佐久間氏が、フリーソロのため一度確認しておきたいというのと、ぼくもこのルートを登りたかったので、二人で行くことになった。


早朝4時に起きる。寒さでふるえる中、朝食を作り出す。
隣のキャンプサイトでも、こんな朝早くから起きているクライマーがいる。どこのルートに行くのだろうか?

キャンプ4から徒歩でエルキャピタンにいく。
佐久間氏がヘッドランプのあかりが見えるというので、センチネルを見ると二つヘッドランプのあかりが見えた。

まだ、暗いうちに取り付きに着いてしまったが、ヘッドランプのまま佐久間氏がリードを始める。
1ピッチ目は、5.9のチムニーとなっているが、ヨセミテの5.9のワイドクラックはかなり要注意しなければならない。
しかし、フォローで登っていると、案外楽だった。ミズガキのベルジュエールの5.7のチムニーの方が、悪く感じる。

2ピッチ目も佐久間氏のリード。このピッチが核心だ。
出だしが5.10bのセクションで、気を付けなければならないのは、残置のピトンでこのグレードのムーブをこなさなくてはならないということだ。
佐久間さんは非常に苦労してこの核心部分を登っていた。
ぼくは、佐久間さんと全く違うムーブで解決したが、そんなに難しくなかったように記憶している。

そのあとのピッチからは、簡単なクライミングになってのほほ~んと登るようになった。

6ピッチ目佐久間氏のリード。
佐久間さんはほとんど、カムを決めることなく登っていき、ビレイ点の直前におまけでカムを決めていた。
ぼくがフォローして登っていると、途中カムを入れたくなるような、ちょっと悪いところがあるのにノープロ。最後に決めてあったカムは、別に入れなくてもいいところだったので、佐久間さんに理由を聞いてみると、
「いや~常識的に一つくらいあった方がいいと思って」
ときたので、思わず、
「途中に入れるべきところがあったでしょう!!!」
と言うと佐久間さんが笑いだしたので、ぼくもついつい笑ってしまった。

9ピッチ目ぼくリード。
ああぼく担当になってしまった・・・。トポには5.9のOWの記述がある。実際、上を見るとオフィドゥスが見えた。登りたくないオーラを出していると、佐久間氏はおもしろそうですね~とにやにやしている。ぼくが、もがき苦しむところを見たがっているのだろう。
何となく弱気になるのはしゃくだったので、結局ぼくがリードすることにした。勿論、フェイスバリエーションの方を登ったのだが。(佐久間氏は残念がっていたような)

しかし、このピッチはすごく印象的だった。どんどんカムが無くなっていく中、ふと下を見るとすごいすごい。露出感が。眼下には、地面まで500メートルの光景が見える。
気づけば、ほとんどカムがなくなっていたので、手持ちのギアで作れる場所を探す。
ほとんど、ハンキングビレイだったのだが、何ともこの高度感が素晴らしかった。

その後のピッチからは、明瞭なクラックはなくなり、巧みなルートファインディングを求められる。なんだが、残置の全くない日本の本チャンのようだ。

昼過ぎにトップアウト。ちょっと一休みしたあと、下降した。
ナットクラッカーのあるピクニックエリアで、このあともう一本マルチやろうという話になったが、やりたいルートで意見が合わなかったので、帰ることになった。

今まで登ってきた、イーストバットレスを下から眺める。あれを登ってきたのか・・・。
ある感慨がぼくの心を満たした。

参考タイム
4:40Camp4~6:00取り付き~6:20登攀開始~12:30終了点~14:00ピクニックエリア
by kaitin-yusei | 2010-01-08 17:40 | ヨセミテでの日々

Bachar Cracker(V4) 10月23日(金)

午前中にBachar Cracker(V4)をトライする。
何度かトライしたら、完登することが出来た。

2年前にさわったときは、スタートすら出来ずに核心は勿論、全く出来なかった。
今度のツアーでは、絶対に登っておきたいルートの一つだったので、完登出来た時は本当にうれしかった。

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  スタートの体勢。 以外ときつい。




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  2手目と3手目。両方とも割とかかりのよいハンドジャム。




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  4手目。 良く効くポイントにうまくフィンガージャムをきかせる。



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  5手目と6手目。  左手の方は保持しづらいフィンガージャムだ。
  このあと、一旦スローパーをつかんで、ガバにとばす。
  ガバをつかめば、実質的に終了だ。

完登したあと、気分をよくして、タイタニックボルダーのトラバースのV7をトライ。が、手も足も出なかった。
スタンディングスタートのV3をシットスタートと勘違いして、悪態つきながらトライしていたら、何と登れてしまった。
V5?くらい???
by kaitin-yusei | 2010-01-06 22:07 | ヨセミテでの日々

Bachar Cracker(V4) 10月22日(木)

昨日のSons of Yesterdayの疲れが残っているので、午前中はのんびりすることにした。

この日ヨセミテをたつYさんとNこさんも、今日はのんびりする様だ。佐久間氏もキャンプ4にいたので、4人でしゃべりながら過ごした。
2時ころ、Yさん、Nこさんと別れた。

ぼくは、レストにしようかどうしようか悩んでいた。さっき4人でいる時、Bachar Cracker の話になって、核心のフィンガークラックがよくきまらないと、Yさんに話した。じゃあ毎日ジャミングして練習したら~?というアドバイスに、ぼくは頭の上に豆電球が点灯するような気持ちになった。

そうか!暇なときに散歩がてら、ぶら下がればいいじゃん!

というわけで、ふらふらとBachar Crackerに道具を持たず立ち寄り、例の核心のフィンガークラックに、左手を突っ込んでみる。
すると、大分前にトライした時の感触より、かなり保持出来ているような気がした。
これはもしや完登出来るかも!?と思い、ボルダリングに必要な道具を携えて、本腰入れてトライを開始した。

前回トライしたときは、核心の下にある尖った岩が恐ろしくてしょうがなかったが、マットの置き方を一工夫し、ちゃんとジャミング出来ていると、不思議と怖くなかった。
一回しか出来なかったが、核心のムーブをこなすことが出来た。

その後、ヘッドランプでのクライミングとなってしまったが、途中のクラックのムーブを探って、自分のテントに帰っていった。
明日もトライするぞ!

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右下に見える岩がちょっと危ない・・・。
by kaitin-yusei | 2010-01-06 17:43 | ヨセミテでの日々

Sons of Yesterday  10月21日(水)

Yさんたちが明日Sons of Yesterday登りに行くというので、ぼくも混ぜていただくことになった。
ぼくは、佐久間氏も誘ったのだが、今までこのルート4回登りに行って3回嵐にあったからカンベンと、めずらしく弱気な発言をしていた。

翌日、キャンプ4の駐車場に集合して、アワニーホテルの駐車場に車をとめる。ちょっと歩くともう取り付きに着くことが出来る。
Sons of Yesterday(5.10a 6P)は、Serenity Crack(5.10d 3P)をアプローチとして登った後に取り付く事が出来るのだが、一般的に両方セットで1つのルートと考えてもいいと思う。
取り付きから眺めると、遙か彼方まで続く一本の美しいクラック・・・に見えるが、よく見ると最初の10mは、無惨なピトンスカーのクラックだった。
協議の結果、Serenity Crackの3ピッチはぼくがリード、Sons of Yesterdayの最初の3ピッチはNこさん、最後の3ピッチをYさんが、リードすることになった。
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  Serenity Crack1ピッチ目の出だし


エイリアンすらも効かないピトンスカーなので、神経をすり減らした。
10mくらい登ってようやくキャメロットを効かせる事が出来て、そこから快適なジャミングになった。



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  快適な2ピッチ目  フェイスのトラバースがちょっと悪い。




核心の3ピッチ目の、10dにグレーディングされているフィンガークラックは、ガバガバなのだがフットホールドに乏しく、またフットジャムも利かせづらかったので、ちょっとキャンパシングしている感じになった。



Serenity Crackの終了点が、Sons of Yesterdayの取り付きになる。
Nこさんリード担当の3ピッチは、プロテクションが効かせられなかったり、奮闘的だったりで、グレードの割に難しく感じた。

一番最初にぼくらが取り付いたのだが、木を支点にするピッチでとうとう後続に追いつかれる。

Yさんが担当した、4ピッチ目と5ピッチ目は本当に素晴らしいクラックだった。
これまで、さんざん苦労させられたのに、まるでご褒美のように美しいクラックを登ることが出来、心からクライミングをやっていてよかったと思える程だった。

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4ピッチ目。きれいなクラックなのだが、見えづらい・・・。



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5ピッチ目。美しきクラック・・・。



もうひたすら、一心不乱に、ハンドジャム、ハンドジャム、ハンドジャム、ハンドジャム、ハンドジャム・・・・・・・。
登り終えると、広いテラスになっていた。これまでは、割とハンキング的なビレイ点だらけだったので、ここで一安心。
本当はもう1ピッチあるのだが、簡単なスラブ登攀である。
もうここでクライミングを完結させてもいいだろう。

後続パーティーに先に降りてもらい、ぼくらもラペルに入った。
60mダブルで5回の懸垂で、取り付きに戻ることが出来た。
ちょうど、日が暮れるころだった。


そのあと、アワニーホテルに行って(ちょっと尻込みしちゃったけど、素晴らしいホテルだった!)、移動してカリービレッジのピザ屋で、Yさんにどでかいピザをご馳走になりました。

本当に楽しい一日だった。

参考タイム
6:30Camp4~8:40登攀開始~15:30終了点~16:00下降開始~18:00取り付き着
by kaitin-yusei | 2010-01-06 12:46 | ヨセミテでの日々


フリークライミングインストラクター・橋本明のブログです。日々のクライミングやスクールの模様を書いています。


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名前  橋本 明

【公社 日本山岳ガイド協会】フリークライミングインストラクタ―
法政大学体育会山岳部コーチ



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【スポートクライミング】
惊雷(5.14a)
Lightning(5.13d)
Gin&Tonic(5.13c)
門前払い(5.13b)
スティングレイ(5.13b)
四国第二国道(5.13b)
シンデレラボーイ(5.13a/b)
虎の穴(5.13a)
カリスマ(5.13a)
デジタルモザイク(5.13a)
ケレンジ(5.13a)
青島啤酒(5.13a)
One Love(5.13a)

【クラッククライミング】
Cosmic Debris(5.13b)
Hang Dog Flyer(5.12c)
叮咚(5.12)
The Reckoning(5.12c)
春うらら2ピッチ目(5.12a)
Leave It to Beaver(5.12a)
タコ(5.12a)
天まであがれ(5.12a)
Short Circuit(5.11d)
バナナクラック(5.11d)
イムジン河(5.11c/d)

【ボルダリング】
蟹クライマー返し直上(三段)
蟹(二段)
忍者クライマー返し直上(二段)
Pugelist(V9)
Bruce Lee(V8)
Deliverance(V8)

などなど
     
  

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